最近X(旧Twitter)で10万の壁、30万の壁という言葉を見かけて面白いなあ、と思ったもので。
ツイートの趣旨としては「10万円未満の備品では使えない」「30万未満のパソコンでは使い物にならない」といったものでした。
10万、30万で変わるもの
おそらく会社にお勤めの方か個人事業主の方だと思います。
まず基本的なお話になりますが、事業用の備品等を購入した場合1つ10万円以上になると消耗品(費用)から固定資産(資産)に扱いが変わります。固定資産になると耐用年数に応じて費用になるため、支出=費用になりません。会社や事業主は費用が多いほうが利益が抑えられて税金も抑えられるため、利益が出ているのであれば10万円未満で済ませてなるべく経費にしたいと考えます。
続く30万円は青色申告をしている中小事業者の場合、「少額減価償却資産の特例」により、上記の10万以上でも1つ30万未満のものは年間合計300万円(10個くらい)まで費用扱いにできるため、購入備品を30万円未満で済ませようとするケースが多いです。
個人事業主が自分の買い物についての意思決定であればある程度我慢ができるかもしれませんが、会社から低スペックの備品を与えられるのはストレスですね。
一方でオーバースペックな買い物で無駄をしないためのセーフティネットとしては有効かもしれません。色々見ているとだんだん高スペックなものが欲しくなってくるのは私だけでしょうか。
上記は利益が出ている場合であって、あまり営業成績が良くない場合、黒字を確保するために経費は抑えたいものですし、そもそもキャッシュに余裕がなければ話になりません。
変わるもの、変わらないもの
面白いなあ、と思ったのはツイートにはパソコンに対する不満が多かったですが、所謂パソコンがビジネス、一般備品と普及したのが1990年代後半からですので、法律ができた頃パソコンは存在していなかったわけで、かみ合うわけがないんですよね。
固定資産の境目、「基準金額」と「1年以上」「事業の用に供するか」、という点は変わりませんが、具体的な物品は決まっていないので該当するモノについては物価、価格の変動、技術の進歩、新たな開発などにより次々と入れ替わっています。
コンピューター、電子計算システムについては当初は莫大な費用の掛かる基幹システムだけであり、これがパーソナルコンピューターとして普及した当初も価格はもっと高いもので、30万に収まるものではありませんでした。当時は固定資産になるのが当たり前です。それが時代が進んでスペックが格段に上がり、価格が下がったことで汎用性が高まり、事業用の資産として一般化してさらには消耗品になる存在になってきました。
個人的にこの基準のはざまで常々違和感を感じていたのが携帯電話です。
初期の電話帳サイズ時代からサイズもスペックもどんどん変わって別物になりました。最初は持ち運べる電話でしたが、今は高機能機器って感じでしょうか。
当初は高額でリースでしか使用できなかった存在から、購入できるものになり、さらに価格はどんどん下がってお小遣いで買えるもの、そして1円まで下がったと思ったら、近年は円安も相まって価格が上昇し、10万円を超えることが普通になってきました。
そんなに高くないものというイメージがついてしまって固定資産台帳に載せるときに毎回、「携帯電話なのにな」と思いつつ、ただの電話ではないですもんね。
もう一つ、変わるものとして「お金の価値」があります。
制定時の10万円と今の10万円の価値が違うのに基準は不変でよいのか。こちらは所得税の扶養控除などについて近年見直しの話し合いが活発化しています。
また、「法定耐用年数」こちらは物品ごとに決まっているので、パソコンについては平成13年に一度見直しされています。(一律6年から5年または4年)
買換えするなら
ところで冒頭の不満に対する対応策ですが、固定資産としてすぐに費用とならない分は未償却残高として資産に残っているわけですから、耐用年数前に処分や売却をするとその分は費用になります。
例)100万で買って年20万償却している3年目の資産
100万-20万×3年=40万円(簿価) → 捨てれば40万の除却損
10万で売れば30万の売却損
法定耐用年数の前に廃棄、買い換えを迎えるのであれば、新しい資産が全額費用にならなくても、それなりに費用は計上されます。
費用も計上したいし、資産のスペックも上げたい場合は早期に買換えするという選択は有効です。
お勤めの方は更新してほしい資産の未償却残高を含めて買い換えの効果を稟議に載せるとうまく行くかもしれません。(知る立場か、知っている人との関係づくりが重要かもしれませんが)
必要なスペックがないと、効率も悪いし結局無駄遣いになってしまいます。
固定資産か、消耗品なのかと必要なのかは別の話ですので、後悔しない選択をしたいものです。
ところで電話帳サイズってそろそろ死語になるんでしょうか。