「相続税がかかるかちょっと教えて」に対する回答

仕事以外の雑談でもよく聞かれる「相続税が心配だからとりあえずちょっと教えて?」
きちんと把握したほうが良いので試算しましょう、とお勧めしています。
雑談の内なので大概「けちー(笑)」となるのですが、お金が欲しくて言っているのではなくて、犬が西向きゃ尾は東のように明確な答えが一つあるものではないためです。

相続税がかかるのはいくらから?

相続税は、亡くなられた方(被相続人)の方の財産の金額から基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の数)を引いた残りに対して計算されます。
前置きの犬の尾である明確な答えとしてお話しするのは「3,600万円を超えなければ大丈夫」としています。

例)財産1億円 相続人が3人の場合
  1億-(3,000万円+600万円×3)=5,200万円について課税

財産は本当にすべて?

亡くなられた方の財産とは、現金預金のほか、土地、建物などの不動産、金や株などの投資財産、趣味の美術品やクルーザーなど様々です。また、借金やローン残債などマイナスも財産です。
現金や預金は残高として明確に把握できますが、土地は場所によって評価の方法(金額の決め方)が異なり、とりあえずで金額を出すことが難しいものもあります。
また、夫婦間で完全に財布を把握している場合などは良いのですが、内緒で株の投資をしてたり、結婚前の積み立てなど、知らないものがあるかもしれません。特に最近はネット証券、銀行の場合は通知も来ないため気づけないことも多いです。
従って、手元の情報だけで財産を推定してみたものの、実際は全然違ったということは十分にあります。

「とりあえずの話だから大丈夫」と皆さまおっしゃるのですが、そうはいっても専門家と知って聞いているのですから、無責任なことは言えません。

相続人は正しい?

相続税の計算で使う相続人とは戸籍の上での親族です。
遺言や家族間で認識しているものとは異なる場合があります。
例えば、養子として配偶者の両親に入れているつもりで、届出はしていない場合は対象外になってしまいますし、養子の場合は状況や縁組のタイミングにより考え方が異なるため、戸籍を確認して正確に把握する必要があります。

もしもの対策はお早めに

大切なご家族を亡くされたとき、悲しみと向きあう暇もなくお葬式や諸々の手続きが押し寄せてきますので、どこでどういう手続きが必要かを把握しておくことは大切です。相続でご相談の皆さまが「こんなにいろいろ大変だと思わなかった」と仰る通り、最低限の手続きだけでも大変です。

また、①で挙げた通り、財産には借金などのマイナスも含みます。これらは原則相続人が引き継ぐことになりますので、財産が1億あったけど、実は知らない借金が3億あったとなっては相続税はかかりませんが、それ以前の問題です。

こういった場合、法的に「財産放棄」の手続きをしたり、プラスの財産の範囲内でマイナスを引き継ぐ「限定承認」という手続きを取ることで、多額の負債を引き継ぐことを回避できますが、これらは相続があったことを知った日から3か月以内に裁判所で手続きをする必要があります。手続きには相当の期間と手間がかかりますので、事前にある程度に把握していないと大きなハードルとなってしまいます。

相続対策というと、生前贈与や税負担を軽減することが注目されがちですが、上記の通り「その時」を迎えても手続きでの負担が大きくならないように準備をすることも大事です。そのためにも、一度財産(プラスもマイナスも)を棚卸して、何が必要かを俯瞰する機会として、相続税の試算をご活用いただくのが良いと考えております。
また、これらを踏まえて生前贈与や遺言作成を具体的に進めることが理想的な相続対策となります。