遺産分割にルールはあるのか

相続が発生した際、相続人は全員で誰がどのように財産を引継ぐのか、遺産分割協議が必要になります。遺産分割協議書は全員が合意したことを書面で記録し、証するために作成する書類です。
申告のご相談で「決まりはありますか?」とご質問をいただくことが多いので、ご参考までに。

唯一絶対のこと

それは「相続人全員が納得していること」です。

法定相続分に従わなければならない、とお思いの方もいらっしゃいますが、法定相続分はあくまで権利の基準であって、分割方法を義務付けるものではありません
財産は個人のものであり、相続財産は相続人のものですので、国に決める権限はありません。
特に財産が現金であれば割合で分けることが可能ですが、不動産の共有は管理上負担になってしまったり、遠隔地で管理が難しいなど、きれいに分割することは難しく、法定相続分きっちりに分割するケースは多くありません。

また、遺言があっても相続人全員が納得していない場合は裁判などで合意が成立するまで解決しませんし、全員が納得していれば遺言とは異なる遺産分割の決定をすることも可能です。
前者は遺言で遺産を受け取れないとされている法定相続人による遺留分侵害額請求をする場合、後者は遺言を作成した時点と相続開始時点で状況が変わってしまった場合などが考えられます。
(法律的なお話は別の機会に改めてご説明したいと思います。)

税金の視点からは

相続人の皆様の決定は尊重されるものです。
ただし、受け取った方、受け取り方によって税金のかかり方は変わってきますので、その点は申告のご相談でアドバイスさせていただいております。
代表的なものに配偶者に対する税額軽減、小規模宅地の特例、二割加算の適用の有無などがあります。

  • 配偶者に対する相続税額の軽減
    配偶者の方が相続する財産については一定の割合まで税額の軽減があります。
    税額負担を抑える場合に活用をお勧めすることがあります。
  • 小規模宅地の特例
    居住用、事業用、貸付用として使用していた土地については、一定の割合評価額を下げる特例があります。評価が下がる=税金がかかる金額が抑えられるため、条件に当てはまる方が受け取ることをご案内することがあります。
  • 二割加算
    財産を相続する人が、亡くなった方の孫や兄弟、その他の場合に税額が二割上乗せされます。
    相続人がいない場合や、多少上乗せしても管理の都合で相続人を決定する場合もありますので、状況に応じてご説明をいたします。

遺産分割協議に関して、アドバイスという形で特定の方に肩入れすることはいたしません。皆が納得しなければなりませんので、「できない」と言うほうが適当かもしれません。
全員が納得するためにも、税負担にどういった違いが出るのか、必要に応じて比較検討のための試算などもさせていただいております。
全員が納得しているのであれば、「多少税金が高くなってもこの財産はこの人が相続する」という決定は可能ですが、知っていたらこの選択はしなかった、ということだけは避けたいものです

また、遺言作成の段階で、税金の負担がどうなるのかも併せて考えていただくことも大切です。
相続対策というと、税金を少なくするほかに、トラブルのもとを作らないようにすることも大切ですので、ご検討の際、お声かけ頂ければ幸いです。